• 2014.9.29
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祖母のいる介護施設

小高い山のふもとに、祖母がお世話になっている老人ホームがある。

祖母が認知症になってから5年程月日が流れ、夜中に起きだしたり、トイレへ行くにも困難になり、苦渋の決断の中ホームへの入居が決まった。

実は祖母が認知症になって以来、私は会いに行っていない。

子供の頃は厳しく、年齢を重ねてもしっかりとしていた祖母。
80を過ぎ、耳が遠くなり始めてからの認知症。

できればまだ元気な時にもっと会っていればよかった。

ホームに入居して暫く、母に促され会いに行くこととなった。

いつ、祖母がどうなるか分からないから、と。

祖母がどのように変わってしまったか、少し不安に思いつつ、建造されてまがない小奇麗なホームへ母と共に訪れた。

職員の方々は献身的で感じもよく、会いに来た私たちを迎えてくれ、祖母と久しぶりの再会との事で個室へと案内してくれた。

車いすに座った祖母はきょとんとした表情で、ほとんど何も喋らなかった。

娘である母の記憶すら危うい祖母が、孫の事まで覚えているだろうか?
母は「元気?」「最近はどう?」など耳元で語りかけ、時折、祖母は私を見ていた。

「まぁ、大きくなったね」目が合った時に祖母はそう私に話しかけてくれた。

成人してから何度となく会っていたが、祖母の記憶は私がまだ小さな時の記憶しかないらしい。

元々、気遣いのある祖母が押し黙ったままの私や母にも昔のように配慮していた事が思い出される。

例え、家族の名前も思い出も忘れてしまっても、祖母は祖母だった。

「もう帰りな」と祖母に促され、面会時間は5分とあったろうか、帰り際かろうじて笑顔で手を振るしかできなかった私は始終悲しいような安心したような妙な気持だった。

老い、家族との別れ、存在するのが当たり前だった人たちがいなくなるかもしれない年齢に、自分も達してきだしたのかなと、実感する事が増えてきた。

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